険悪ムードは苦手なんだけど…、





























10. 朝焼けの涼しさと喧騒の

























コムイと話し終えた後、科学室班前で待っていたと会うと朝飯を食べようか、という事になった。

自分が起きたのは大体六時前くらいだったから、今は七時を過ぎた辺りだろうか。

丁度そう言われ昨晩から何を食べていない事に気がつき、無意識のうちに自分の腹へと手を当てていた。

も確か何も食べないまま寝たみたいだったから、丁度良かったのかもしれない。

食堂へと続く廊下を談笑しながら歩いていた途中、見覚えのある白髪の少年が視界の端に映る。

其方の方へ視線を向けてみたら彼も気がついたのか、此方のほうを向き優しい笑みを向けてきた。

間違いない、やっぱアレンだった。


「三人とも、おはようございます」

「ああ…おはよ、アレン」

「おはー。今から食堂行く所だったん?」

「そうです、朝トレしてたらお腹空いちゃって」

「丁度私達も行く所だったの、よかったら一緒に行こう?」

「いいですよ」


一通り会話を終えた四人は同時に歩を進め出し、廊下を進む。

しかしは予想していた通りだ、と眉を顰め少し居心地が悪そうな表情を湛えていたのにアレンが気がつき声をかけた。


、さっきから機嫌悪そうですが…何かあったんですか?」

「いやー…周りの目がうざったいだけだよ。気にしないで」


彼女はそれだけ言うと軽く苦笑を零し、更に左手を左右にひらひらと振る。

でも眉を顰めたままの表情を崩そうとしないのに話し込んでいたも気がついたのか、苦笑を零す。

は一度横目で未だに視線を寄越して来る人々を一瞥し、盛大な溜息を吐いた。


「何がそんなに珍しいんだっての…しかもアレンの陰口まで言ってるしよ」


その言葉を聞き、一瞬アレンはもう一度問い返したくなった。

確かに自分でも此の髪の事で様々と奇異の視線を投げ掛けられていた事や、陰口など叩かれていたのには流石に気がついている。

でもその際誰かにフォロー、というか庇われた事はない。

今まで自分とティムキャンピーだけで旅をしていたというのにも理由はある、誰かと一緒に旅をしていたわけでなかった。

しかし今確かに彼女は自分をも案ずる言葉を言った、間違いなく。隣に歩いているが。


「気にしてませんよ、昔から言われてましたし」


そう、苦笑を交えた笑みと言葉を同時に漏らせば軽く頭を後ろから叩かれた。

パシンッ、と小気味良い音が朝特有の涼しげな空気が漂う廊下に響き痛くもないのに思わず条件反射で其処に手を当て叩いたを見る。


「な、何するんですか…」

「はッ、君馬鹿だろ」

「どうしてそんな事言われなくちゃいけないんですか…?!」


少し、というか大分に鼻で軽く笑われた事にもショックだったし、何よりも罵られた事が悲しく思わず眼が潤んでしまう。

だがそれさえ気にも掛けず彼女は両腕を前で組むと一度宙に視線を向けて、再びアレンの方へ視線を向けた。

その時の彼女の眼は微かに真剣さを帯びていて、思わず睨まれているわけでもないのに背筋が強張る。


「そうゆう時は反発しなきゃ『中身はお前等よりはマシだ!』ってな、まぁー…言う勇気があればだけど」


余りこの手段はあれだけどな、とは真剣さを湛えていた眼に柔らかな笑みを湛えて視線を前に戻した。

確かにそうゆう言葉は下手すれば反感を買ってしまうかもしれない。しかし、自分を勇気付ける為の言葉なのだろう。

彼女が今までどのような日々を送っていたのか定かではないけれど、少しだけ彼女の何かを知れたような気がした。

の、優しさと強さの一部分を。


「はは、参考にしておきますよ」


今はまだ、深く知る事はいけないのだろうと心の中で逸る自分を顔に笑みを浮かべると同時に深く押し込めた。

まだ、彼女と居られるだろうから。











大分皆も起き始める時間帯なのだろうか、食堂の中は結構な人の多さで思わず四人は入った場所で立ち尽くしてしまう。

しかしスタスタと歩き出したが「其処に居ると邪魔なるよ」と促してきたので、他の三人は列になっているところへと並んだ。

かなりの大きさを誇る食堂は、黒の教団が如何なる財産力であるのか一目で分かる程。

何処かのホールくらいもある大きさの食堂を維持させるのにも大変な財産が必要になるんだろうな、と少し教団という場所に関心しながら視線を戻した時だった。


「アラん?!」


急に聴こえた声には思わず驚いて眼を見開き後ずさってしまった。

、それにアレンも其の声に驚いてしまったようで程ではなかったが各々の反応を見せていた。

自分だけがあんなに驚いたのか、と少し溜まっていた眠気も一気に覚めた格好で声の主へと視線を向ける。

何とも、何というか…あれだ。まぁ色々と人には事情があるのだろう。

はわけのわからない心の中に生まれた思考を抑えつつ、目の前に居る人物を見た。


「新入りさん?んまーこれはまたカワイイ子達が入ったわね!何食べる?何でも作っちゃうわよアタシ!!」


どうやらこの人は賑やか、というか根本的な所から明るい人なのだろう。

誰にでも差別するわけでもなく普通に接してくれる、こうゆう人が居てくれて少し安堵感が生まれたは軽く息を吐いた。

アレンはフライパンと箸を持った人にそう問いかけられ、顎に手を添えてメニューを考えている。

自分は何を頼もうか、とアレンへ向けていた視線を戻し少しの間考えていたら彼が口を開いた。


「じゃあグラタンとポテトとドライカレーとマーボー豆腐とビーフシチューとミートパイとカルパッチョとナシゴレンと……」


これには流石に驚いたのか、というか驚かないほうがおかしい程だった。ちなみに今でも注文は続いてる。

アレンが頼んだ量はとてもではないが彼のように身体が細めの男性にはきつい筈の量。

勿論、が三人協力して食べても多いくらいだ。

それをさらりと注文し終えたアレンを見ながらフライパンを持った人は苦笑を湛え「あんたそんなに食べんの…?」と呟く。

アレン以外の人皆目を点にして暫く立ち尽くしていたが、フライパンを持った人(後にジェリーさんと名を教えて貰った)が此方を向いた為は視線を合わせた。


「あんたは何食べる?」

「…何だかアレンの注文聞いただけで腹が…」


そう苦笑を湛えながら空腹である筈の腹を手で軽く擦れば、隣に居たアレンは苦笑を零す。

でも矢張り食っておかないときついだろうなと何を頼もうかなーと一瞬視線を外した時だった。




「何だとコラァ!」




とてもこの和やかな場には似合わない怒声が食堂内に響く。

何事だろうかと皆が視線を其方へ向けてみれば、探索部隊の人だろうか。

白いコートを纏った巨体の男性が黒いコートを纏い、テーブルに着いている人へ向かって怒りを露わにしている顔を向けていた。

少し眼を凝らしてみれば、黒いコートを纏っている人物は長い黒髪を高い場所で結っていて、怒る男性とは裏腹に澄ました顔の青年。

は其の人物が誰であるか気がついた瞬間、思わず「あー…」と声を漏らしていた。


「うるせーな、飯食ってる時に後ろでメソメソ死んだ奴等の追悼されちゃ味がマズくなんだよ」


青年、神田は男性に眼を向ける事無く箸を食べ終えた食器の上に置きながら紡ぐ。

その言葉は男性にとって亡くなってしまった仲間に対しての侮辱と捉えてしまったのか、更に顔を怒りでゆがめた。


「俺達探索部隊はお前らエクソシストの下で命懸けでサポートしてやってるのに…それをっ…飯がマズくなるだと…!!」


怒りが抑えきれなくなったか。

未だ視線を向けようともしない神田に向かって探索部隊の男性は思い切り拳を振り上げ、神田へ振るう。

しかしそれを難なく避わした彼は素早く男性の喉下に腕を伸ばすと、勢い良く男性の首を掴み締め上げる。

その様子を見ていたは神田の素早さに関心していたが、流石にアレはやり過ぎだろうと少し眉を顰め隣の達の様子を窺ってみた。

二人共、彼のやり方には賛同ではないようだ。少々不服そうな表情を湛えながらも、止めに行こうとはしない。

その方が二人にとって賢明な判断だろうな、と思いは再び視線を神田たちの方へ向けた。


「サポートしてやってる、だ?違えーだろ、サポートしかできねェんだろ。お前等はイノセンスに選ばれなかったハズレ者だ」


段々と首を締める力を強めているのか、神田が掴み上げている男性の顔色はよくない。

周囲に居る探索部隊の人たちも男性を助けたいようだったが、彼に関わるのはよしたほうが良いと思っているのか動かずに。

そんな彼等に追い討ちをかけるように、彼は更に続けた。


「死ぬのがイヤなら出てけよ、お前一人分の命くらいいくらでも代わりはいる」

「ストップ、」


途端、その場にアレンの声が響いたかと思えば何時の間にか彼は神田の手首を掴んでいた。

流石にヤバイと思い歩を進めだしたも、アレンが移動していた事に気がつかなかったようで。

少々驚いていたが、今はそんなところじゃないとコツコツとブーツの踵を鳴らし彼等の元へ歩み寄る。

後ろからが自分を呼ぶ声が聞こえたが、構っている場合じゃない。あの男性を早めに介抱しないと生命に関わる可能性がある。


「そういう言い方はないと思いますよ」

「………放せよモヤシ」

「(モヤッ…?!)アレンです」


神田のモヤシ発言に少々頭にきたのか、アレンが僅かに眉を顰めたが彼は気にせずアレンへ向けていた視線を戻した。


「はっ、一ヶ月で殉職なかったら覚えてやるよ。ここじゃパタパタ死んでく奴が多いからな」




「そうゆう言い方ないってアレンが言ったばかりだろ」




パシン、と軽い音がその場に響いたのと同時に男性の首から神田の手が離れた。

そのままだと床に勢い良く倒れてしまう筈の男性は誰かに支えられて、静かに床に下ろされる。

男性は苦しかったのか、咳き込みながらも自分と神田の手を離してくれた人物を見た。

彼を助けたのは藍色がかった黒髪を肩ぐらいに伸ばした見た事も無いエクソシストの女性。

「大丈夫か?」と聞かれ静かに頷き返せば、「そっか、」と小さく笑みを浮かべ女性――は立ち上がり神田を見据えた。


「流石に口と行動が酷い、やり方は他にあるんじゃないか」

「…てめェが指図できる立場かよ」


凄く荒んだ視線で急に割り込んできたを睨めば、彼女は軽く溜息を吐いて口を開く。

彼女の表情は怒っているわけではなかったが、瞳が微かに呆れた色を浮かべていたのが近くに居たアレンでもわかった。


「まぁそう言われればそうなんだろうけどさ…君も同じでしょ、そんな高い地位持ってるの?」


口調が段々と、怒るというよりも宥めるような声色になっていき終いには普段男性口調である彼女が女性の口調に戻っていた。

それには流石に変化に気がついたのか、言われた側の神田も傍に立っていたアレンも驚き眼を見開く。

しかしは彼等の驚く様子にも気を向けないまま、くるりと背を翻し歩を進め出す。





「人は皆同じ立場な筈、所詮道が違うだけだ」





背を向けた彼女の顔は見えなかったから表情は窺えなかった。

だが口調が何時もの男性のような口調に戻り、声色に少し怒りが籠もっているような気がして居心地の悪さに神田は口の中で小さく舌打ちをする。

アレンも一応は場が治まったと思ったのか、元の場所に戻ろうとした時。


「神田、アレン!!」


名を呼ばれた人、それ以外に声に気がついた者が其方を見やればリーバーとリナリーが大量の書類を抱えたままの格好で立っていた。


「10分で飯食って司令室に来てくれ、任務だ」



「………任務?」



の元に戻り、二人に「大丈夫だった?」と質問攻めに合い適当に返していた所だった。

リーバーの言葉に疑問を覚え、思わず声を漏らす。

任務というのは矢張りアクマ退治に行くのだろうか。

そして、こんなにも早く自分が出ても大丈夫なのだろうかという不安感。

呼ばれたからには行かなければならないのだろうな、と小さく息を吐いてジェリーの方に振り返る。





「手軽にサンドイッチとコーヒーでお願いしとくよ」







余り食っていられる時間はないだろうな、と今日何回目かわからない溜息を小さく吐いた



















                                       2006.10/1











ぐはっ、中々に神田と仲良くできない…あわわ…
  どうやって神田と良い感じにさせられるか検討しておかないとアカンですね。彼と絡めるのマテールぐらいですし(絡めるてお前
  そして当サイトのヒロインは溜息つく傾向が多いようです、だから幸せな夢書けないのかな!(知るか